* 地域猫のトラミ

2014/10/23 | Filed under | Tags , .

うちの近所には、トラミちゃんという地域猫がいます。↑

トラミは、7年前にわたしがこの地域に引っ越してきたとき、おそらく1歳になるかならないかの若い猫でした。うちのあたりより西の方のエリアでよく見かける猫で、ご近所の方複数のお話をつなぎ合わせると、そのあたりで時々餌をもらったり、生ゴミをあさったりして生きていたようです。

(ご近所の酒屋さんで飼われるようになったシャム混じりの猫ちゃんは、交通事故にあったのがきっかけで飼うようになったけど、当時、その猫といつも一緒にいたのがトラミだったとか。もしかしたら、姉妹だったのかもしれません。)

そのトラミが、2009年の1~2月ごろから、元いたエリアよりも東の、うちのあたりに出没するようになりました。すみついていたお宅(高齢のご婦人宅で、ほとんど不在)の玄関前スペースに、若いミケ猫が現れて、なわばり争いに負けたのだそうです。

↑そのミケちゃん、まだこの写真の時は生後5~6ヶ月の子どもでした。この子もは後に、飼い猫になりました。

そして、うちのニャンカをいじめていたトラ柄のボス猫(お時間があれば、ニャンカの話も、合わせてお読みください)とトラミは当時カップルで、そのボス猫を頼って来ていたようです。ニャンカの食べ残しを外に置き忘れたときには、それを食べたりしていたみたい。ちなみに、ボス猫は、どこかで十分な餌をもらえているらしく、ニャンカの餌はほとんど食べませんでした。それよりも、ニャンカをいじめて追い出して、自分の彼女というか奥さんであるトラミに食べさせようとしていたのかも。

さて、ニャンカが2月ごろ完全室内飼いになってほんの1週間くらいのうち、ボス猫はぷっつりと姿を見せなくなり、同時にトラミも見かけなくなりました。

ボス猫は、それっきり行方不明。でも、トラミは、5月の連休ごろになり、またうちのあたりによく現れるようになったのですが、なんと、両親と同じキジトラ模様の小さな子猫を2匹連れています。うわ〜〜かわいい、けど、これは大事件。。。

子猫を連れた姿はかわいいので、ご近所の方もおやつをあげたり、散歩で通る方がわざわざパンを持ってきてあげていたり。猫はパンなんて食べるのかな?と思うのですが、生ゴミをあさるくらいの飢餓状態の時は、食べるみたいです。よく、近所の生ゴミも荒らされていました。あるとき、トラミの娘の子猫が袋をやぶって何か食べているのを見たら、わらび餅。猫は完全肉食動物なのに、栄養足りてないよね、きっと。(その子猫、チッチは、子どものとき低栄養だったからか、今もかなり小柄です)

トラミも子猫も、野良度が高く、まったく近寄ることはできない状態です。で、子猫の性別はわからないけど、もし2匹ともメスだったら、このまま放置すると、来年はプラス6〜8匹で町内の野良猫は合計10匹以上になるかもしれません。

そのとき、じつは、トラミの元のなわばりから、トラミを追い出したというミケちゃんも、すごく若いのにもう子猫を生んでいました。しかも、前の年はうちの裏のお宅の庭で、ニャンカ(結局うちの飼い猫になった)の他、別にもうすこし年上の子猫が2匹生まれていたようです。(この猫たちは裏のお宅で飼われるようになり、ニャンカのなわばりのキッチンコートに時々来て、兄弟ではないニャンカとも遊んでくれるので、ニャンカはこの猫たちが来ると、とても喜んでいました)

なんだか、野良猫が爆発的に増えつつある危険を感じました。猫好きの人も多そうですが、家の中で飼えるというおうちは限られているし、飼える数にも限界があります。

一番恐れてしまうのは、猫が増えすぎて、迷惑がられて駆除されたり、いじめられたりすること。そういう事態だけは避けたい。

と、いうことで「なんとか」することを決心して、定期的に餌で馴れてもらう努力をはじめたのが6月ごろ。猫の発情期は年末頃からはじまるので、なんとしても秋の間に、避妊手術をしようと思ったのです。

餌をあげはじめると、野良猫トラミの健気なお母さんぶりに、心が動かされました。

最初のころ、鍋セットが入っていた大きめのアルミの空容器に入れて、3匹に一度にあげました。そのとき、トラミは、一歩下がって、子猫たちがおなかいっぱいになるまで、自分は食べずに我慢しています。子猫が食べ終わると、自分はがっついて、やっぱりものすごく空腹だったみたい。

また、べつのとき、トラミが一人だけでいたので、ゆでたささみをあげたら、ちょっと離れた所にくわえていって、「ルルル」という声を出しました。すると、近くの植え込みのしげみから子猫たちが出てきて、それを食べています。1個ずつ、大事そうに子猫のところにくわえて運んでいくのです。でも、3個めくらいでその美味しい味に耐えられなくなったのか、自分でも食べてしまっていましたけれど。。。

さて、避妊手術については、誰にも断らず勝手にしていいのかという疑問も、頭をよぎりました。そのときの私は、まだ引っ越してきた翌年で、近隣の事情を飲み込めてない上、野良猫に見える猫が、じつは飼い猫だったというケースをすでに目撃していたからです。でも、いろんな人がちょこちょこと餌はあげているものの、ちゃんと飼われてはいないようだし。念のため、ご飯をあげているお宅の方に確認すると、その家の猫という認識はないとのお返事。

費用のこともありました。ふつうに計算しても、3匹手術すると、10万円近くになってしまいます。

たとえば、ご近所さんに声をかけてカンパをお願いするとか。でも、当時のわたしには、そういう政治力ゼロ。今も政治力はないけど、今なら、ダメ元でお願いしてまわるくらいならできる気分ですが、その時には、それをどなたにどう言って良いかもわからないし、相談する人もいないし、そんなことをアレコレ言ってる間に、猫たちはまた妊娠してしまう可能性が高いのです。ニャンカの餌を外に置いていて、結局トラミちゃんがそれを食べてたという事実もあるし、まあ、私が避妊手術に着手する責任もあるかな。

と、いうことで、独断で、費用も全額自分が出す覚悟をきめて、任務を遂行しました。かかりつけの獣医さんに相談すると、ふつう夜は手術はしないけど、つかまえられた日に電話すれば、その日にしてくれるとのこと。念のために血液検査も。

さて、餌でうちの玄関あたりに来るようにになっていたトラミ親子ですが、触らせてくれるようになっていたわけではありません。でも、まだまだ幼い生後半年くらいの子猫2匹については、マグロのおさしみでつって、まだ2〜3kgくらいでそれほど大きくないので後ろからそーっと忍び寄って手で抱え、すぐに洗濯ネットをかぶせる方法で捕獲成功。順調に、まず最初の日にメスの子猫のチッチ、その3週後にお兄ちゃんのトラ次郎の手術をすませることができました。

トラ次郎はオスということがわかった時点で、手術しなくても、という選択肢もありました。オスは、2歳くらいまでにメスを求めて家出していなくなるから放置で良い、と考える人もいるようです。とくに私たちより高齢の世代の方には多い考え方。でも、去勢しないままオスを放置しておくと、血みどろの「仁義なき戦い」を繰り返して大騒ぎになるし、おしっこはかけるわ、病気をもらってきてしまうわ、サカリのシーズンの抗争がキッカケで、猫の移動が起こり、ほかの猫が流れて来たりで大変なのを以前住んでいた所で見ていました。で、とにかくなるべく平和な方が良いと判断して、去勢することにしたのです。

10月中に、子猫2匹は無事手術をすませ、のこったのが、お母さん猫のトラミちゃんでした。野良育ちとはいえ、まだ扱いやすい子猫たちに比べて、野良で2歳すぎまで育った生粋の野良猫です。ものすごく動きも素早く、触らせてくれないどころか、目があえばシャー!と言って逃げて行く状態。(うちの餌は食べてるけど)これをどうやって捕獲するか。。。

チッチ

巷には「捕獲器」なんてあるようですが、そんな大げさなものを家の玄関前とかに置いていたら「何事?」となってしまいますよね。それに、捕獲されたトラミが、中でうなったり大暴れなんてしたら。ここは、家が立ち並ぶ住宅街で、山の中でも、公園でもないわけで、できれば、それは最後の手段にしておきたい・・・

そこで1ヶ月ほど重点的にトラミちゃんに美味しいものをあげ、うちに毎日来てもらい、でも無理に近づいたりせず多少なりとも心を許してもらえるようつとめました。そして、ある日外のガレージで、食べてる所をそーっと捕獲に挑戦。子猫のときと同じ作戦で、後ろから洗濯ネットでガバッと包もうとしてかぶせたのですが、見事に逃げられて、洗濯ネットをひきずったまま、走って行ってしまったのです。なんとかネットは落ちたから良かったけど、そんなものをかぶったままだったら、危ない所でした。

その日は緊張でグッタリ疲れたし、トラミちゃんはまた警戒して、うちにあまり寄り付かなくなってしまいました。

手術予定日をもう一度きめ直し、トラミちゃんに餌をあげている他のおたくの方には、協力をお願いしました。(つまり、その日は、必ずうちに来てもらいたかったので、できればしばらく餌をあげないでもらえますか?とお願いしたのですが、なかなか意図が伝わらず。自分が、意外とそういうとき話下手で、説得力がないのが悲しかったです。)

でもなんとか無事に、うちに来てくれて、マグロで玄関に招き入れて、食べているところを後ろから大きな洗濯ネットをかぶせて捕獲できたのです〜〜〜!!ネットの中で暴れましたが、そのままサンタの袋みたいにしてぶらさげると、動けなくなりました。そのままキャリーバッグへ上から。ああ〜〜猛獣。怖かった〜〜〜(T_T)

足もがくがくしたまま、病院へ。そして、手術は無事に終わりました。たしか、11月の後半になっていたと思います。

↑つい最近のトラミ。避妊手術からもう5年。手術のときに剃ったおなかは、ずっと毛が生えないままなのです。自分でいつもペロペロ舐めてしまっているのでしょうか。。。このおなかを見ると、いつも申し訳ない気持ち。

さて、「手術終わりました」と書くと簡単なんだけど、メスの避妊手術って、やっぱりかわいそうなんですよね。すごく痛そうだし。オスももちろんかわいそうですが、オスの手術は軽くて麻酔も浅く、たいていは終わるとすぐに元気になります。メスはおなかを切るので痛いはずだし、麻酔も深くかけられるので、回復にはそれなりに時間がかかります。

だから、信頼できるかかりつけの獣医さんに相談して、安いからといって知らない病院に行くのは避けました。それでも手術のせいで猫が命を落とす可能性はゼロではないけど、もしそんなことが起きた時、悔やまずにいることは無理としても、最大限のベストを尽くしたと後で思えるように。。。

野良猫管理のこういう処置は、TNR(Trap Neuter Release, つかまえて、避妊去勢して、もとのところに放す)とよばれるらしく、家では飼えないけど、最低限ふやすのを止めるためにできること、というわけで、この言葉はアメリカ由来だそうです。で、「もとのところに放す」というのを、手術当日に放すのがやむを得ない場合もあるようですが、わたしの場合は、1晩は、うちの猫が来ないようにできる玄関のスペースにケージを置いて、看病しました。

すると、いつもはあんなに気丈なトラミちゃんが、目に涙をいっぱいため(これは麻酔の影響だと思いますが)、子猫のように夜通し鳴いていました。子猫のチッチのときもかわいそうで泣けましたが、今回も辛くて、私も一晩中あまり眠れず、できる限り横にいて背中を撫でてあげるしかできませんでした。

でも、翌朝は、容態も落ち着いて、麻酔も完全に抜け、表情もしっかりしてきました。ごくわずかですが、レトルトのスープも飲んでくれました。そして、外でチッチとトラ次郎の声が聞こえると、むくっと起き上がって我に帰り、出して〜〜!!と鳴き始めたトラミちゃん。チッチのときも、一晩しか看病できなかったけど、無事に回復したし、これ以上は逆に、トラミ自身にとってストレスになりそうなので、外に出すことにしました。

そして、そのあと1週間くらいは、うちには全く寄り付きませんでしたが、ご近所のほかのお宅でご飯は食べていたそうです。

↑現在のトラミ

そのあと、私もひきつづき、それまで通り餌をあげるようにしています。うちは猫がすでに4匹なので、餌やりから撤退したい気持ちも(予算的に)あったのですが、以前は生ゴミをよく荒らされていたのが、うちも餌やりに加わってから、さすがに食べたりるようになって、ゴミが全く荒らされなくなったし。。。何かあったときに捕獲して保護できるためには、餌はあげて仲良くしておいた方がいいかなと考えました。

思いがけないよかったことは、避妊手術の時以来、特に全く触れなかった警戒心の強いメスの子猫チッチが、わたしになついて、撫でさせてくれるようになったことです。子猫のチッチには、私が手術に連れて行ったことはわからず、ただ私が迎えに行って、夜通しそばについていたことだけが刻み込まれたようです。大変な目に遭っていたところを助けてくれた人、と誤解してくれて、それ以来、少しずつなついてくれました。

もともと、ものおじしない性格だったトラ次郎も、以前よりもずっとなつくようになりました。

そして、子猫たちが、わたしを含め町内の人たちになついていくにつれて、トラミも、だんだん心を開くようになっていったのです。それでも、トラミが町内の人たちみんなになれて、完全に触れるような猫になるまで、まるまる2年かかったとおもいます。

(TNRについて)

さて、それから5年。トラミ、チッチ、トラ次郎は、今もうちの町で元気です。避妊手術のときに、血液検査もしたのですが、3匹とも、猫エイズ、猫白血病ともに陰性。ニャンカの時には抱っこするだけで手が痒くなったほどノミダニだらけでしたが、そういうこともありませんでした。今も、夏だけはダニ予防でフロントラインを1回ずつつけるくらいです。ただし、3匹とも、1〜2回ずつ怪我や病気で、病院のお世話になったことがありますが。

トラ次郎。6kg以上ありそうな大柄な猫で、おおらかな性格。

わたしの家のある所は、ちょうど猫好きなおうちが向かい合わせに5軒並んでいるのもラッキーでした。でも、トイレの問題もあります。わたしは花壇のすみを開けて、そこで猫がトイレをできるようにしたり、ほかの、餌を与えているお宅の方も、そのおうちのプランターなどを猫がトイレにしているのを黙認してる状態です。でも、猫は気まぐれなので、つねにそこでしてくれるとも限りませんし、こうやって猫がいることを、快く思わない方もいらっしゃるでしょう。

一方で、並んでいる家々の方々のみならず、通りがかりの方や幼稚園の行き帰りの子供たち、ご高齢の方がたなど、今は人によくなれているこの猫たちを、可愛がっている人たちがたくさんいます。いろんな理由で自分の家では猫(やほかの動物)を飼えないけど、猫をかわいがったり、接することを楽しむ人は、想像以上に多いという印象です。

あのとき現実としては、わたしにできた最大のことはTNRで、たぶん私でない人が何かをするとしても、同じことをしたはずだと思います。もし質問を受けることがあったら、説明しようと思っていたけれど、そういうことは、まだありません。

野良猫問題は、こうすれば解決、というような解の公式はなくて、状況によると思います。うちの町内の場合は、今こういう状態で、なんとかバランスを保てている状態です。

↑左がチッチ、右がトラミ。見事にかくれてます。

悔やむとしたら、今ではすっかり触れるようになったトラミたち親子を、とくに生後半年くらいだったチッチとトラ次郎は、そのときに思い切って家の中に入れて、飼い猫にしていたら、という考えもあります。

でも、あの時は、今のように馴れてくれる状態になることが予想もつかず、また、今やすっかりご近所のみなさんにかわいがられています。うちだけに閉じ込められるより、町の自由な猫でいたいにちがいありません。

気になるのは、こういう地域猫たちは、年とったらどうなるのかな?トラミちゃんはもう7歳くらいのはずです。外で暮らせないくらいに年取ったら、うちで保護できたら、とも思いますが、ニャンカを飼いならす時でもさんざん苦労した経験があるので、長年外で暮らしているこの3匹が家の中で暮らせる猫になるかどうかは、わかりません。

避妊手術をする前も、する時も、かわいそうだし、いろいろ悩みました。その期間は本当に大変だったけど、でも今、のんびりした猫たちの姿を見ると、やっぱりあのとき手術して良かったと思っています。

避妊去勢手術は、人間の勝手といえば勝手だけれど、一番現実的で、人にとっても猫にとっても、一定の平和を得られる方法だと思います。

もし、私と同じような状況で、避妊手術について迷っている方がいたら、大丈夫、絶対手術はした方がいいよ!と声を大にして励ましたい気持ちです。

↑手前がチッチ、奥がトラミ。ちなみに、別のお宅では、トラミはナビー、チッチはバジルとおしゃれな名前です。

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