* 長尾弘子さんの絵

2014/10/16 | Filed under アート | Tags .

今年の7月、12年間一人暮らしをしていた母が、京都に引っ越してきました。実家を片付けていたとき、数年間行方不明になっていたこの絵を、やっと発見。保存状態が悪くて、なんと絵に染みができてしまっていたけど、なんとか無事に見つけられて良かった・・・

子どもの頃から、家に飾ってあり、私が大好きだった絵です。大好きすぎて、結婚するときはもらってきて、ずっと自分の部屋に飾っていたのですが、自分の引っ越しの時に、いったん実家に預けたら、どこにしまったかわからなくなっていました。

この絵は、徳島県在住の長尾弘子さんという日本画家の方の作品です。もう80歳代後半になられると思いますが、今も活動されています。植物をモチーフに描かれる作品が多いと思います。

長尾さんは、今は故人である父親の仕事関係の方の奥様にあたる方で、アトリエに遊びに伺ったこともあります。(子どもだったので、何もわからなかったのが残念)そんな事情もあり、長尾さんの絵が何点か、うちにあったのです。また、ほかの画家の掛け軸とか、油絵などもあったのですが、とにかく、この絵が一番好きでした。

そして、わたしが中学生になるかならないかの頃に、長尾さんの最初の画集をいただきました。その中には、とてもうちでは入手できない、大きな作品の画像がたくさん納められていますが、その中でも何点かは、いつも飽きずに眺めていたほど、大好きでした。

↓これは、画集の中でも特に好きな絵。「碁石椿」。

その後、大人になって、いちおう教養的な美術の知識も、すこしは身につけ、超有名な日本画家、歴史的に有名な画家の展覧会もいろいろ見て、古典の中にも好きな画家もいます。等伯の「松林図」なんて、かなり好きな絵ですが、それでも、わたしは今も、長尾弘子さんの絵の方が、もっと好きです。

長尾さんのそれらの絵のどういう所が好きかというと、やわらかな空気感と、繊細だけど素朴な感じ、かな。こんな絵描いてみたい、とずっと夢みていたし、植物を描くようになったのは、こんな絵を毎日見て過ごしていた影響かもしれません。

偶然、長尾さんの絵がうちにあったからなのか、たまたま自分の中にあった感性と、家にあった絵が見事にマッチしたのか。そのせいなのかどうかわかりませんが、私は今も、西洋の絵よりも、日本画の方がすごく好きです。

このチューリップの絵は色紙に描かれているものです。小学校1年生くらいの時でしたが、和紙を開けて、その色紙が出て来た時の感動から覚えています。日々眺めるうち、子ども心に、ふんわりと描かれているのに、花びらのふちがキリッと濃いアクセントになっているのが、とにかく素敵と感じていたことも。

それに、ささっと、数えられるくらいの限られた筆さばきで描かれているのに、チューリップの量感が出ている描写力。子どもの頃、いつも眺めながら、「上手だなあ」と感じていたこともおぼえています。

こんなふうに描けたらいいなあ、と思っていた気持ちとともに、いつも心の中にこの絵を持っていました。つまり、自分の「原点」とよべるのかも。

子どもの頃、それくらい好きだと思える絵が家の中にあり、毎日身近に眺めることができたのは、しあわせだったと思います。絵が、生で手に触れられる状態で、生活の中に自然にあるという感覚でした。



Comments are closed.

Trackback URI |