* 小島一郎写真集成

2009/04/07 | Filed under アート | Tags .

10年くらい前、40歳代、50歳代の人の話を聞くと、若いころに比べて興奮したり感動したりすることが少ない。と 多くの方が仰いました。その時には、どういうことなのかよくわからなかったけれども、最近では、すこしわかる。それは、わたしにとっては いたずらに気持ちがブレない、落ち着いた心の状態とも言えるようにもおもえます。

そんな日々ですが 「興奮」「感動」をおぼえました。この写真集に出会って。

小島一郎という、青森や北海道の人や風景を撮った写真家の写真集です。39歳という若さで、1960年代に亡くなったそうですが、生前すでに有名だったらしい。亡くなった後はしばらく忘れられかけていたようですが、このたび青森で写真展が開催されたそうです。

きびしい津軽の風景や、そこに生きる人のすがたは、被写体としてとても生々しいのですが、驚く程、それが造形として昇華されています。とくに最後の方の雪の風景。コントラストの強い焼き方もあって もうほとんど抽象画に近いほど。もし、身近な人が、こんな写真を撮ってたら、「こんなに研ぎすまされてしまったら、この人もう死んでしまうのじゃないだろうか」と心配になると思います。それくらい透明感があり、息をのんでしまいました。

こんな写真、実物を見てみたいものだと、おもいます。本によると、ピューリッツァー賞をとった報道写真家(戦場カメラマン)の沢田教一は、青森で小島一郎が経営していた写真店に勤めていたことがあり、影響を受けたと書いてあったので、小島一郎のスタンスも「ドキュメンタリー」だったのかもしれません。けれども、単なるドキュメンタリーではなく造形美をとことん追求しているのが伝わって来ます。蛇足ながら、生前の写真を拝見すると、小島一郎さん、かなり男前でもあります。

かっこよすぎる写真集でした。



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