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* すずちゃんが来た日

2014/10/12 | Filed under | Tags .

2012年の9月に、当時12歳だった銀次郎という猫が亡くなりました。うまれたての時に拾って、カテーテルで授乳して育てた猫でしたが、生まれつき障害があって、心臓や呼吸器が弱かったのです。亡くなる1年前に一度危なくなったのを持ち直して、薬を飲みながらがんばっていたのですが、ある朝突然に。

銀次郎は性格がとてもフレンドリーで、うちに来てくれるお客さんたちにもすごくかわいがってもらいました。朝起きたら息を引き取ってて、最後を看取れなかったというのがあり、夫婦揃ってものすごくショックを受けてしまいました。うちの歴代の猫の中でも、とくに夫を大好きだったので、夫の悲しがり方も大変なもので、家の中があまりに暗すぎて、、、それで、子猫をもらおうという話に。

で、里親募集でもらったのが、すずちゃんです。生後2ヶ月弱くらいで、うちに来ました。

うちにいる猫のうち、きょうだいが多かったハナ蔵は、とても猫フレンドリーで、ほかの猫が大好きです。うちが何匹も猫を飼えるのは、ハナ蔵がどの猫とも仲良くするから、という要素も大きいのです。それで、今度もきょうだいの多い猫で、できればメス、と思いました。なぜか我が家では、拾い猫はオス続きなので。すずちゃんは、まだ目があかないうちにお母さん猫ごと保護された子猫で、6匹きょうだいでした。

さて、保護活動をしてる方が、すずちゃんを連れてきてくれる日。うちでたった1部屋だけ、閉めることのできるお客さん用の部屋に、ケージなどを置いて待ちました。子猫の新入りは久しぶりなので、まずはこの部屋で生活してもらって、少しずつほかの猫と馴らそうと思ったのです。

小さなすずちゃんが、やってきました。あらかじめネットで写真を見て、だいたい決めていたのですが、いちおうメスのきょうだいは全員連れてきてくれるということに。どの子も可愛くて、人にも馴れてる、、、

ほんとはみんな一緒にもらいたいけど、それは無理なので、茶色の部分が一番多いこの子に決定。↓

最初は、お母さんやきょうだいをさがして、ずっと鳴き続けていてかわいそうでしたが、その分、私たちにはすぐに馴れてくれました。

↑2日ほどは、ずっと家族を探して鳴いてた。

子猫はほんとうに馴れるのが早いし、うちのハナ蔵は、とにかく子猫の世話が好き。もともとたくさんのきょうだいと育った子猫だったら、きっと子猫の方も他の猫とスキンシップするのが大好きだろうし、2〜3日でケージから出して、あとはハナ蔵に面倒みてもらえば大丈夫、と思っていました。

↑そして、子猫の声を聞きつけたハナ蔵は、さっそく調べに来ました。すずちゃんはケージの中。

ところが、ゆっくり近づいてきたハナ蔵に、すずちゃんは、ウワーオ、ギャー!!!と、びっくりするようなけんか腰です。そして、ケージのドアをガッシャン!!と手でゆすって、すごい音をたてて威嚇。私の心臓も止まりそうなほど。まだ離乳して間もないくらい、800gあるかないかの赤ちゃん猫がです。。。

いきなりすぎたかな、、と思って、次の日、その次の日と少しずつ会わせてみましたが、激しい威嚇は変わらず。ハナ蔵は、かわいいな〜〜という感じで見ているのに、敵意200%という感じです。

これは、なかなか深刻な事態。子猫の方がこんなだと、子猫好きのハナ蔵まで、だんだんイライラしてきました。なんだか一触即発の気配。ハナ蔵が、もし本気で怒って攻撃したら、子猫の敵意はもっとエスカレートするでしょう。

すっかり読みが外れてしまい、緊張してきました。せっかく、家の中で猫どうしの良好な関係がやっと築けているというのに、軽い気持ちで子猫をもらってしまったことを後悔もしました。こんな調子で、仲良くなれるのかしら。しかも、すずちゃんの威嚇の声は、ほんとにキーッ!!という感じで、ヒステリックです。人間には、まったくそういう敵意はなくて、すぐになついてくれたのですが。

5日ほどたっても、事態はまったく好転せず、とにかく子猫のすずちゃんが一歩も退かない感じです。ものすごく気が強いのかな。。。それにしても、先住猫たちには敵意がなく、すずちゃんさえ友好的ならすぐにでも仲良くなれるのに、すずちゃんの方が変わってくれないと、このままでは。という気になり、一計を案じました。

気分を変えるためにも、健康診断という名目で、いきつけの獣医さんに連れていったのです。待合室には、犬がいつもたくさん来てるから、大きな犬とか、外の世界を少し見せてみようかしらと思って。

さて診察室でも、すずちゃんの唸ること。今まで、外にいる野良の避妊去勢手術も3匹したことがありますが、野良育ちの猫と比べても、すずちゃんのうなり声は、金切り声で病院中に響くほどけたたましく、おまけに今にも襲いかかってきそうな戦闘態勢。まだ小さいからなんとかなるけど、獣医さんも、ちょっと呆れ顔。。。

とりあえず外見には異常はなく、また小さすぎるので初回ワクチンはあと2〜3週間後ということになり、診察は終わりました。そして、待合室で、ことの次第を看護婦さんやほかの飼い主さんとお話していたら、ミニチュアダックスを連れた飼い主さんが、「じゃあ、うちの犬けしかけてみましょうか?」と言って、すずちゃんのいるバッグの近くに、ダックス君を抱っこして近づけてみました。すずちゃんは血相かえて、バッグの中で恐ろしい声で唸っています。ダックス君は、じーっとすずちゃんを見ていましたが、ワン!と吠えました。すずちゃんは、大パニックでギャー!!!。

すずちゃんにはかわいそうで、恐ろしい一幕でした。ふつうなら、こんなことしようなんていう発想はまったくないのですが。。。でも、すずちゃんは安全なバッグの中にいるので、実際に危ないことになる心配はない状態でした。だいたい全長15cmくらいしかない子猫から、こんな怖い威嚇の声が聞こえる方が怖かったです。

でも、なんと、そのショック療法は功を奏しました。家に戻ってから、ケージにハナ蔵が近づいても、すずちゃんはあまり大声で唸らなくなったのです。獣医さんで見たダックス君に比べたら、ハナ蔵が少なくとも、じぶんと同種の動物で、しかも自分に敵意を持っていなさそうなことは、わかったのでしょう。(今考えると、ちょっと危険な賭けでしたが)

それで、ほかの猫が来られないようにした上で、すずちゃんの行動範囲を少しずつ広げて、1Fのリビングなどを自由に歩く時間をふやしました。

また、ケージ越しに他の猫たちに会わせる時間を増やしましたが、すずちゃんの敵意がゼロになった訳ではなく、うなり声は減ったものの、心を開く様子は見えません。正直、子猫の方からここまで先住猫に激しい敵意があるなんて、今まで見たことがなく、かなり特殊なケースかも。獣医さんに行ってから2日目、すずちゃんが来て1週間目、夜もケージの中ですずちゃんが「出してー!」と鳴いてる声が大きくて眠れないし、なんだかわたしも育児ノイローゼみたいになってきて、「もう、この子猫は飼えない」という気持ちになってきました。こんなに他の猫に敵意があるんだから、多頭飼いではない家にもらってもらった方がいいのでは?LINNETに連れて行って、スタッフの子たちに見てもらおうかな。

そんなふうにだんだん思い詰めてしまい、朝、すずちゃんの部屋へ行って、連れていくためにバッグに入れようとしたのですが、敏捷なすずちゃんに、そこでするっと逃げられてしまったのです。そして、すずちゃんは、今まで行ったことのない2Fめがけて、階段をドタドタと駆け上がって行きました。わあ、そっちはディープな先住猫エリアなのに!!!私たちは「待ってー!!」と追いかける状態。

いきなりすずちゃんが2Fに駆け上がってきたので、他の猫たちは目が点になって逃げ腰です。でも、すずちゃんは、他の猫を見ても、どうしたわけか、もう唸りませんでした。そして、なぜか、一番母性本能の少ない、「子猫の世話なんてうんざり、寄って来ないでねお願い」という精神のふくちゃんに寄って行きます。(メスだということがわかって、お母さんみたいな感じがするんでしょうか。。)ふくちゃんはカーッ!!と怒って、ビシッと猫パンチ。

キャーッ!(←私の心の叫び)

すずちゃんが逆襲?!と思ったら、なんと、素直に猫パンチされただけで終わりました。ふくちゃんは、自分に害がなければ、他の猫とか犬がそのへんにいても気にしない性格で、「わかればいいよ」という雰囲気で、すずちゃんを無視してスタスタと自分の寝場所へ。

そして、すずちゃんは2Fじゅうを歩き回り、ほかの猫たちが寝ているベッドや、あちこちを見て回り、、、もうおとなしくケージには入りそうにないので、ケージは片付けて、見守ることにしました。片付け終わって、気づいたら、猫ベッドに寝そべっているハナ蔵の耳にじゃれてかじりついています。ハナ蔵はカーッ!!と怒っていましたが、最後はすずちゃんは、ハナ蔵おじいちゃんに抱っこされるような感じで、寝てしまいました。

へなへなと腰の力が抜けるような朝でした。突然、トンネルの向こうに抜けたというのでしょうか。考えてみると、2Fへ駆け上がっていった時は、すずちゃんが、先住猫のなわばりに侵入した状態でした。そして、すずちゃんがケージにいたときは逆で、先住猫の方がすずちゃんのなわばりに入って来たことになります。この朝は、すずちゃんが積極的に先住猫のなわばりとわかってて侵入して、それでも、先住猫たちはビックリはしたものの、唸るとか、追いかけ回すとか、攻撃するような所が一切なかったので、そういうことをすずちゃんは一瞬で感じ取って、安心したのかもしれない、とも思います。

思えば、あのときすずちゃんがバッグに入れようとしたのから逃げて、だだーっと2Fに上がって行ったときが、すずちゃんが本当にわが家のメンバーになった瞬間だった気がします。(ニャンカの時も同じようなことがあった)うちでは、寝室も仕事部屋も2Fなので、人も猫も、2Fにいる時間が長いのです。きっとすずちゃんは、みんながいる2Fに、ずっと行きたかったんでしょうね。

睡眠不足で育児ノイローゼ気味に陥ってたとはいえ、「この子猫は、飼えないかも」なんていう気持ちになったことを、今はほんとにすずちゃんに悪かったなと思っています。すずちゃんは、その時、うちの家族になりたい!と全身で自己主張してくれた訳ですから。

そして、その時以来、気がつくとすずちゃんはいつもハナ蔵のふところにもぐりこむようになりました。

ちょっと引っ込み思案なニャンカと完全にうちとけるまでさらに1週間かかりましたが、つまりうちに来て2週間後には、完全に家族の状態になりました。結果的には2週間でなじんだわけですが、生後2ヶ月に満たない赤ちゃん猫だったので、2日くらいでなじむだろうと甘く考えてしまっていたため、長く感じられてしまったのです。

そんなすずちゃんは、今2歳になり、ふだんは、かなりおっとりした猫になりました。最初の頃は、ごはんもウーウー唸りながら食べていましたが(小さな体で)、今は、ほかの猫に横取りされても、ぼーっとしています。

もともとの気の強さは、あまり発揮される機会はなくなりましたが、外の猫と会ったりした時には、今も垣間みられます。そして、体がとても敏捷。1歳年下のきよしは、すずちゃんよりだいぶ体重も重いのですが、運動神経で負けていて、プロレスをしても、今でもきよしの方が押され気味。すずちゃんは、外に出たら、喧嘩が強いのかもしれません。避妊手術のときは、麻酔が覚めた瞬間ケージ内で大暴れして、目の角膜を傷つけてしまいました(全治しましたが)。血液検査のときのうなり声もものすごく怖くて、通常の半分しか採れなかったのです。

ただ、すずちゃんの名誉のためにつけくわえると、威嚇の声は怖いけど、実際に本気でひっかいたり噛んだりはしません。ふくちゃんなら、怒ると噛んだりするのですけれど、そういう所は一切なし。

そして、予想したとおり、じつは他の猫とのスキンシップが大好きで、1年後に迷子の子猫だったきよしを拾ったときも、ほとんど当日から仲良しになり、また、ふくちゃんやニャンカにも、いつも、とてもフレンドリーです。(ふくちゃんとニャンカの場合は、自分たちの方から、ほかの猫に対してほんのすこし距離をとりたがる)

↑左から 時計回りにハナ蔵、すずちゃん、子猫のきよし

↑お勝手口の外にやってくる、地域猫のチッチと。どっちも気が強いメスどうし。

さて、今ふりかえってみて、すずちゃんが最初に持っていた、ほかの猫への激しい敵意について考えてみると。

全般的に、メスの子猫の方が警戒心は強いので、知らない人や猫に会うと隠れたり逃げたり、最初は馴れにくいというのも、あるとは思います。また、生まれつきすずちゃんは、気が強いめ、かな?(でも、気が強くないメス猫っていうのも、見たことないんだけど)

ただ、じつは、もらったときから、すずちゃんの首には1cmくらいの傷がありました。姉妹猫たちにはなくて、すずちゃんだけ。

保護されていたおうちでは、すずちゃんたち親子は隔離されてたらしいのですが、そこに別の猫が侵入して、噛まれたことがあるとのこと。傷はすでにふさがっていたので、当時、あまり深く考えませんでしたが、子猫の首に1cmの傷ができるほど噛まれたというのは、想像すると大変なことです。考えてみると、ものすごく大けがだったんじゃないのかな。その過酷な経験の恐怖で、あんなに他の猫に敵意があったのかなと、今は思います。

そして、避妊手術のときの血液検査でわかったのは、すずちゃんは猫エイズ陽性(発病していなくて、キャリアの状態)だということです。まだ検査のできない子猫のときにもらったので、そういう可能性もなきにしもあらず、というのはわかっていましたが、お母さん猫は猫エイズも猫白血病も陰性だと聞いていたので、それで子猫に感染というのはないな〜とタカをくくっていたのでした。つまり、首を噛まれたときに感染したとしか考えられません。

猫エイズについては、調べたり、獣医さんでも相談しましたが、最近では、ふつうに一緒に飼って、同じお皿を共有したり、グルーミングしあったりするくらいでは、まずうつらないことがわかってきているようです。また、ストレスのない完全室内飼いでは、発病の可能性も限りなく低いこともわかっているらしい。

なので、猫エイズのことは、なんとなく気をつける程度で、あんまり気にしないことにしました。すずちゃんと接触が一番多いハナ蔵ときよしにも、全然うつっていませんし、漏斗胸という先天性の骨の障害をもっていて心臓や呼吸器も弱かったた銀次郎に比べると、すずちゃんはとても健康な普通の猫です。

そして、自慢じゃないけど、わが家は、猫にとってかなりストレスのない家だと思うのです。もし、最初に首の傷のことを重大視して、ましてやすずちゃんを噛んだ猫が猫エイズ陽性とわかっていたら、ほかの猫たちがいるわが家では、すずちゃんでない子を選んだかもしれません。けれど、私たちは、なぜか最初から、ほぼすずちゃんに決めていたような所もあって。何かの計らいか、めぐりあわせで、すずちゃんはうちに来るべくして来たのかな、と思ったりもしています。

そして、すずちゃんが来て、銀次郎を突然亡くしたショックで、ものすごく暗かったわが家も明るくなり、だいぶ高齢のふくちゃんもハナ蔵も、すずちゃんのいる活気で若返った感じもあるし、すずちゃんと同じくかなり敏捷なニャンカには、同じレベルで体を動かせる遊び友達ができました。

この間の10月6日は、猫のすずちゃんがうちに来て、ちょうど2年目でした。

ちなみに、すずちゃんという名前は、本名は「鈴虫」です。源氏物語風の、和風のすてきな名前をつけたくて、、、「空蝉」とかの真似をして、つけてみましたが、フルネームで呼ぶ機会は、ほとんどないのです。

↑今2歳。マットにしているクロスで狩りの練習中。

↑洗面所に新しいカゴを置いたら、すぐに入る。

↑すずちゃんは、ニャンカ(右)のベッドにも、もぐりこもうとしていましたが、ひとりっこ育ちのニャンカは、すずちゃんが入ってくると、自分は移動してしまいます。他の猫とべったりくっついて寝るのは、落ち着かないらしく、10cmくらい離れて一緒にいるのが良いみたいです。

↑ふくちゃん(奥)とすずちゃん。ふくちゃんも、とても気の強い活発なメス猫です。新入り子猫のふるまいが度を越すとビシッと怒る、威厳のある教育係。子猫を無償の愛でかわいがるハナ蔵がお母さん的だとすると、ふくちゃんの方がお父さん的で、役割逆転してるかも。。

↑2013年9月、すずちゃんが1歳になった頃、保護したきよしと。

*すずちゃんの1年後に、迷い猫だったのを保護したきよしは、当時生後2ヶ月弱で、すずちゃんが来たときとほぼ同年齢。きよしの場合、まったくおとなの猫たちへの敵意がありませんでした。念のため1泊だけケージで過ごしたものの、翌日から、すぐみんなと打ち解けて、室内で自由行動してもまったく大丈夫でした。(そのせいで、きよしをとくに可愛がったハナ蔵とすずちゃんには、きよしがひいていたのと同じ風邪がうつり、みんなして病院に注射しに行くはめになりましたが)

↑2014年10月現在。すずちゃん4.5kg,きよし6kg.むぎゅ〜〜、きよし出てってよ〜〜〜。でも、プロレスをすると負けないすずちゃん。お姉ちゃんぶりは板についています。

↓そして下はハナ蔵と。

おじいちゃんになってから、こんなになついてくれる子猫が来て、じつは、一番ハッピーなのはハナ蔵だったりして。

↓おとなになっても、ハナ蔵おじいちゃんが大好きなすずちゃん、今ではどちらかというと、すずちゃんの方がハナ蔵をせっせとグルーミングしてることも多く、よく尽くすようになりました。

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